ONLY ONE NAME

2021/01/20 18:28

このコーナーは、Boojilが描いたネームアートをお贈りした方に、直接会いに行き

名前の由来やその人の背景をご紹介するインタビュー連載です。

今回は、ONLY ONE NAMEのホームページをリニューアルする上で
昨年赤ちゃんモデルを募集した際に、全国から応募のあった81名の赤ちゃんの中から選ばれた赤ちゃん
「葉山 維太」(はやま いった)くんのために描いた、ネームアートとその名の由来をご紹介します。

目をキラキラさせて笑う、この世界を肯定してくれるかのような存在、天使のような赤ちゃん。
まだ1歳に満たない、維太くんは生後7ヶ月。

お写真で拝見していた時から、とても可愛い赤ちゃんだなあと思っていたけれど
実際に会って、直接触れて、その可愛さは想像以上。

大きな目に、つるつるの肌、やわらかな産毛、ふくふくとした健康的なからだ。
小さな手も、足も、その全てが愛しい。
その場にいた大人が全員「かわいい、かわいい」と連呼してしまうくらい
瑞々しい、そのかわいさを解き放っている。


赤ちゃんモデルをお願いした理由は、表情や、かわいさだけではない。

選ばせていただいたポイントの中に、赤ちゃんが生まれた時の
名付けの由来と、そのエピソードがある。

維太くんは2020年5月9日、ちょうど日本全域に緊急事態宣言が発令された期間に産まれた。
コロナウイルスの影響で、病院内は必ずマスクを着用、立ち会い出産が許されなかった時期で
看護師さんや先生方も感染予防を徹底する必要もあり、ピリピリとした状況の中、
出産されたお母様はとても、とても不安だったそう。

命をお腹に宿してから出産まで、きっと妊婦さんの誰もが不安を抱えていると思う。
その上、世界が大混乱に陥った中での出産は、更に不安だったはずだ。

しかしながら、その不安はコロナウイルスのことだけから来るものではなかった。

維太くんを出産されるちょうど1年前。
双子を妊娠され、妊娠7ヶ月にして死産。という、信じがたい辛く悲しい出来事があった。

結婚して8年、待望の命を宿し、それが双子の女の子という嬉しい報告。

きっと、きっと、楽しみな気持ちを抱えて過ごされていたのだろうな。と思う。

妊娠23週、6ヶ月の頃、先生に「赤ちゃんの状態にリスクが生じています。」と言われたそうで
不安を抱えながら、その後を過ごし、2019年5月9日、迎えた誕生日は、ふたりの命日となってしまったそう。

同じこどもを持つ母として、その出来事の悲しみは計り知れない。
想像よりもはるかに、辛く、心を痛めたと思う。
おそらく、お母様は自身を責めただろうし、ご主人ともに、辛く、苦しい思いは今も消えていないはずだ。
しかし、悲しみにくれながらも、前を向いて諦めなかったご夫妻のところに、
死産から3ヶ月後、お腹に新しい命がやってきた。

それが維太くんだ。

もうあんな経験はしたくない、働いていたことで少なからず身体に負担がでていたのかもしれないと
お母様は思い切って仕事を辞め、お腹にいる赤ちゃんと寄り添うように日々を過ごした。

赤ちゃんが誕生するまでの十月十日。
いろんな不安を抱えながら、命と対話し、声をかけ、いろんな想像をしたと思う。

良い結果や悪い結果、どちらも想定しただろう。
様々な想いをめぐらせて、赤ちゃんの健やかな誕生、成長を願っただろう。

お二人の、そして双子のお姉ちゃんたちの想いが結びついて、お腹にいる赤ちゃんは
この世界が混乱状態にある中でも、強く、たくましく、産声をあげた。

赤ちゃんが生まれた日は、2020年5月9日。
なんと、双子の赤ちゃんの誕生日と同じ日に誕生したという奇跡。
これはただの偶然ではないような気がする。

わたしが「こどもの未来をどう想像しますか?こうなってほしい。とか、ありますか?」と聞くと、
「生きているだけで充分。」ご両親は声を揃えて応えた。

出産は命がけであることを、経産婦のわたしは深く理解しているけれど、
この世に生まれ、健康に育つことは決して当たり前ではないことを、
維太くんの誕生秘話を聞いて、改めて考えさせられた。

「維」という字には、綱、つなぐ、結びつける。という意味がある。

維太くんの名前には、「友達や家族の結びつきを大切にする人、人と人をつなぐ人になりますように。」と、願いを込めたそう。

インターネットが普及してから、人と人が直接コミュニケーションをとる機会が、どんどん少なくなっているこの時代に
この言葉は、忘れずに心に留めておきたい大切なメッセージだと思う。

そのエピソードを聞いて、
「維」という字には、笑顔のお母さん、お父さんに抱かれる赤ちゃんを。
願いが叶うように、流れ星と、いろいろなご縁と結ばれるよう、黄色、青、緑、赤色の糸を結びつけた。
その中に、微笑む双子の赤ちゃんと、その想いが通じるようハートも描いた。

「太」という字には、健康、成長を願って、少年になった維太くんを描き、
燦々と輝く太陽をそえた。

嬉しいことに、作品をお渡しして、封を開けた瞬間。
お母様は感激してくださったようで、涙を流していた。

「双子のモチーフがどこかに入っていたらいいなあ、って主人と話していたんです。」

こんなに喜んでもらえたことが、ただただ嬉しい。
作り手にとって、こんなに幸せなことはないなぁと思う。

葉山家をつなぐ宝物のような存在、維太くんがこれからも元気に、
健やかに、大きく成長できることを願っている。
文章:Boojil
取材場所:OKP STORE






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